会のはじめに萩シェフが用意したのは水とチーズ、サツマイモだ。
「まず、基本的な食材を食べていただいて、Umamiéの代表的な効果を感じていただきたいと思っています。液体をまろやかにする効果、油脂分やたんぱく質を含んだ食材が柔らかく変化する効果、そして速やかに、かつ安全に脱水する効果をみていきましょう。」
ちなみに、Umamiéの設定はことわりがない限り庫内温度が0℃、中心温度が8℃、風量は強。この設定で多くの食品が対応可能だという。
「水」でUmamiéの「まろやか効果」を感じる
萩シェフが最初に取り出したのは、なんと水!それも、Umamié Waterとラベルまで貼られている。まだまだ硬さのみえる参加者一同の顔に笑みが浮かぶ。
「どんな食材もUmamiéにかけると変化が出るということを一番よくわかっていただけるのではないかということで、水にかけて見ました。ウィルキンソンの炭酸水と、ここいわき市の水を浄水器でろ過したものを炭酸水にしたもの、そしてそれをUmamiéに15分ほどかけたものを味わっていただきます。」
興味津々に飲み比べる参加者一同。口にすると、その顔に驚きと「やっぱりそうか」という表情が浮かぶ。明らかに、Umamiéにかけた方が、明らかに口当たりが柔らかくなっているのだ。この後、炭酸の入っていない水も登場。その傾向は同じである。
「Umamiéの効果はいくつかあるのですが、液体にかけたときに最も特徴的に出るのがこの『まろやかな口当たりになる』という効果です。水でこうなるのですから、調味料でも同じような効果がでます。」
(萩シェフ)
カマンベールチーズ
次に萩シェフが出してくれたのがカマンベールチーズ。それも高級なものではなく、よく売られている市販のカマンベールだ。その方が、効果の違いがよくわかるということで萩シェフが選んだものだ。
これも参加者が口運ぶと、すぐにUmamiéの効果がわかるような状態だった。かけていないものと比べ、内部がトロッとして口当たりがクリーミーになっており、味わいも濃く変化している。
「Umamiéに15分かけただけで、チーズ自体がトロッとして、うま味も増しているのがお分かりだと思います。なお、形を保つためもあって、パッケージのままでUmamiéに入れました。15分でこの変化がでるので、レストランはやらない手はない。時間が長ければよいというものではなくて、半日くらいがちょうどいいでしょうね。もし3日もかけてしまったら、溶けてしまうと思います。」
(萩シェフ)
「イタリアンの業態なので、チーズはいろいろ試しました。モッツァレラはフレッシュさが喜ばれるチーズですが、Umamiéにかけるとフレッシュ感が残っている状態なのに、うまみや柔らかさが増すので、なぜだろうと不思議に思いながら使っていました。チーズには油脂分やたんぱく質、塩分が含まれます。この3つの要素はどれもUmamié効果を強く受ける性質があるんです。ですから、チーズは効果がとてもわかりやすい食材だと思います。」
(小川シェフ)
サツマイモ
そして萩シェフが微笑みながら出してきたのが、3つのサツマイモが乗った皿だ。観ていただければおわかりの変化だが、これがどんな日数で出来たものかがトピックなのだ。
「蒸かしたサツマイモのべにはるかを、左からUmamiéで3日間、真ん中が5日間、そして右端が10日間かけたものです。ごらんのとおり10日間かけると、カラカラに乾燥した『節(ふし)』になるんです。これをみていただくと、Umamiéの脱水効果がわかると思います。」
これをみたシェフ達、興味深そうにつんつんとつつき、その触感を確認する。
思わずであろう、ジャヌ東京の田村氏の口から「すごいッスね」と、その脱水の仕方に声が漏れる。それも、5日目と10日目のものを触ったときに、だ。
「うちは野菜を重視している店なので、あらゆる野菜で試しています。実は野菜をUmamiéにかけるときは、生の状態よりも調理をした後にかける方が、効果がわかりやすく出ます。3日かけたものは、ネットリ度が上がって、甘みや旨みも強くなっておいしい。さらに進むと強力な脱水が始まって、10日かけるとカツオ節のように挽けるようになります。」
そういって、本当に削り機でイモ節を削り出す萩シェフ。
これを食べたレストランオオツの大津氏が「これ、サツマイモ味のハードチーズみたいな味わいです。」と漏らす。
「そう、このUmamiéを使うと、お店オリジナルの節を作ることができるのが強みなんです。福島ではトラフグが揚がるのですが、大漁の時に仕入れて節にしておきます。そして、ソースヴァンブランなどを作る際にフグ節をちょっと加えると、ソースの味が一気に引き上げられます。
興味深いのは、自然状態で脱水・乾燥させようとすると、表面がダメージを受けたり、酸化臭が出たりします。でもUmamiéで脱水をかけると、細胞が壊れないのか、5日でも10日でも腐らず、綺麗な状態で安全に脱水できる。だから表面もツヤツヤして綺麗で、なにより雑味がないんです。」
萩シェフの言葉に「マイクロ波で振動しているから腐らないんだろうか?」などと推察しながら、みなフグ節の味見。
この、Umamiéをかけることで脱水をする際に、表面がダメージを受けないまま綺麗に脱水されていくという現象は、
以前のフグ節の記事でも書いた通りだ。サツマイモのネットリからカラカラの脱水までをみて、さらにフグの話へと色んなところに飛んでいくので、4人の参加者も大変だが、みな驚きのまなざしをしつつ、食材をつつき、味わっていた。
さらに、カボチャを蒸して脱水したものや、バナナの熟成日数違いを味わう。
バナナはごく普通の、スーパーで買ったものですが、3日かけたものはそれだけでドルチェになるくらいの味わいだった。
「以前、香川の柿農家から、冷凍の柿を干し柿にできないか、実験をして欲しいと言われました。そこで、皮を剥いて冷凍した状態の柿をUmamiéにかけたのですが、2~3日で、表面の色も綺麗な素晴らしい干し柿になりました。ふつうに干し柿を作ろうと思うと2~3週間くらいかかってしまいますが、Umamiéだと数日間で、ダメージがない綺麗な状態のものができあがるんです。」
(小川シェフ)
このように、萩シェフ・小川シェフからUmamiéの3大効果である「まろやかにする」「柔らかくする」「すみやかに脱水する」の説明がなされ、4人の料理人はしっかりその効果を舌と心に刻んだのである。
この頃になると参加者一同、ほぐれてきて、いろいろと意見を交わすようになってきた。
「私の店ではやはり牛肉をメインに扱うので、和牛をUmamiéに入れています。まだ使い始めて間も無い状態なのでデータは少ないですが、和牛の脂が変化して、柔らかくなるというかマイルドになる効果があると思います。それ以外の食材も試してますが、湯葉は見た目は変わらないと思ったら、食べたら別ものになっていました。あと、イチジクやアプリコットといった果実も、入れると甘味が強くなるような気がしています」
(伊藤氏)
「当ホテルでは、解凍したホタテをUmamiéにかけて、そうでないものと食べくらべをしたことがあります。ホテルの調理部門ではない方に食べてもらったところ、『もう明らかに違う!』という反応で。そこですかさず『この装置、入れましょう!』と話したんですよ(笑)」
(樋口氏)
さあ、そしてここから、いよいよ萩シェフによるUmamié料理の時間が始まるのだ。
(つづく)