コースをじっくりと、集中して味わっていたからか、参加者一同に少し疲れもみえるところだが、それでも目が爛々と光っている。それぞれの席に置いておいたメモにもギッシリと書き込みがされている。最後に、感想と質問タイムを持つことに。まずは志摩観光ホテルに今日戻らねばならないという樋口氏からだ。
「今日は、実際に使いこなしている方のお話しを伺うことができて本当によかったです。この食材にはこの芯温と庫内温度でどれくらいに、という話はいろいろ聞けると思うのですが、もっと本質的な使いこなしについて学ぶことができました。Umamiéの活かし方も、単に柔らかくさせたり凝縮させたりするだけではなく、様々な効果があることもわかりました。また、脂肪分や水分を含んでいるものほど違いが大きくなることも興味深いですね。伊勢志摩の新鮮な食材に活かせると思います。」
(樋口氏)
続いては日本料理側から参加していただいた、ジャヌ東京の田村氏。
「今回の萩シェフ、小川シェフの料理のおかげで、仕上がりをイメージして、逆算して使っていくと言うことが大事なのだとわかりました。私も、食材を入れて熟成を促進するとだけ思っていたんですが、全く違う技術だったということがわかって、驚きの連続でした。ポン酢の話をしましたが、味わいが丸くなるというのは、これからの可能性を大いに感じます。野菜の変化もそうですし、サツマイモ節が出てきたのをみて、本当に驚きました。これをカウンターでやったら、お客様に楽しい驚きを提供できます。いろいろと試してみたい。」
(田村氏)
そして、最高級の和牛肉と選り抜いたお米を主軸に、日本料理も供するなか武の伊藤氏。
「私も、まだ使い始めですが、味噌や酒など、基礎調味料からUmamiéにかけて試してみようと思うようになりました。また、日本では酒もそうですが、発酵調味料もいろいろあります。それらをUmamiéにかけると、味わいも変わるのではないかと思うようになりました。いま、お肉とお米を売りにしていますが、その重みづけは今後変わっていくかもしれません。Umamiéを使ったら、いろんな食材がおいしくなる可能性が出てくるので、そこの情報交換をまたしていきたいなあ、と思っています。この食材はこうしたらこうなった、というデータを情報共有できるようにしていきたい。」
(伊藤氏)
そして本日、ずっとうんうんとうなずき続けていた、レストランオオツの大津氏。
「アワビはうちでもよく使う食材なのですが、それをウェットで15分かけるだけで、あんなにおいしくなるのかと驚きました。それだけではなく、乳製品も野菜もそうですし、UmamiéがHAGIのおいしさの重要な部分だったことがわかりました。うちでも使えないか、考えていきたいと思います。」
(大津氏)
樋口氏、帰りのタクシーを待つ中で、魚のUmamié使いで質問が。
「魚にかける時には、温度に気をつけるべきと思いますが、それ以外に考えておくべきことはあるでしょうか。」
(樋口氏)
「まず、Umamiéでは食品衛生の観点から、魚や肉を10℃以下で保存しなければならないということを重視しています。そこで食材の中心温度を10℃以下にして、庫内温度を0℃に近い状態で冷やせば安全だろうということで、私は設定を芯温8℃の庫内0℃に設定しています。この状態だと、先の川俣シャモのような肉にもよい変化を出せます。ただ、獲れたての新鮮な魚だと、8℃の芯温は高すぎるかも知れません。もうすこし低めに設定した方が、デリケートな変化を得られると思います。
また、カルパッチョのように食感が大事な料理にする場合、乾燥させないようにラップをしたり真空パックにしたりしたウェットの状態でUmamiéにかける方がよいでしょう。逆に、3~5日間ほどねかせた魚を出すときに、匂いが発生することがあります。この時にドライ状態でUmamiéにかけると、その匂いが消えてくれるという使い方があります。脂に臭みのある大型魚をソテーする前に、皮目だけラップを外してUmamiéにかけると、皮の下の脂が分解されて、臭みがなくなります。逆に言えば、香りや個性を消してしまうので、鮮度が高いときは使わない方がよいやり方です。」
(萩シェフ)
「それで、昆布締めをUmamiéにかけると、どんな変化があるでしょう?」
(田村氏)
「昆布締めは大きな変化があります! ヒラメや伊勢エビを昆布締めにしてUmamiéにかけると、とてもよい結果が出ます。とくに少し塩をあてて昆布締めにすると、塩もUmamiéでのよい反応があるので、その効果でなじみがよくなります。」
(萩シェフ)
「その時、ラップはかけた方がいいんでしょうか?」
(伊藤氏)
「その魚の身質にもよりますが、ラップをかけている方が水分のヌケが急速すぎませんし、いいと思います。Umamiéを使っている料理人も、ラップなどをしてウェットでUmamiéをかける人の方が多いですね。」
(小川シェフ)
こんな風に、さまざまな活用方法が飛び交う中、樋口氏を迎えに来たタクシーが到着。みなで「ウマミエ~」で写真を撮って、解散と相成ったのである。
今回、参加してくれた料理人が一様に言っていたのが「食材や料理をUmamiéにかけた時の結果を情報交換したい」ということ。仮称「Umamiéクラブ」を創設して、情報を共有できる仕組みを作りたいものだ。もちろん、情報をもらうだけではダメ。積極的に「この食材をこう処理して、この温度条件で何分かけたら、こうなった」といった情報を出していただける人が、参加できるクラブがあれば、Umamiéの使い手が一気に増えていく、素晴らしい展開となるだろう。
この交流会に参加してくれた4名の料理人に感謝。ぜひこれからUmamiéの使い手となっていただきたい。そして、ホストを務めてくれた萩シェフと小川シェフにも感謝。やはりUmamiéは素晴らしい日本の食文化を前進させる力を持っていると確信した。そして、その使い方はまだまだこれからも切り拓いていかねばならない状況だ。Umamiéの使い手になりたい料理人は、名乗りを上げていただきたい。