香川食材をサステナブルにおいしく使いこなす術とは!?
香川食材をサステナブルにおいしく使いこなす術とは!?
(取材・文・撮影:山本謙治)
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小川翼シェフ
香川が生んだ革新技術の一番の使い手
小川シェフ

香川県多度津町に本社を置く四国計測工業が、マイクロ波を用いた熟成促進装置「エイジングブースター」を発表してから7年。それが細かな改良を重ね、またグローバル展開を見据えて、新型機にして新名称「Umamié(ウマミエ)」へと進化した。料理界を変革する可能性を秘めたこのUmamiéを、四国計測工業のお膝元である香川県で最も早い時期から使いこなし、新たな調理法を確立してきたシェフがいる。その人こそ、高松市のイタリアンレストラン「ノッキングキッチン」のオーナーシェフ・小川翼シェフだ。
これまで小川シェフは、イタリアンという枠にとらわれず多種多様な食材でUmamiéの検証を繰り返してきた。その対象は、肉や魚といったメイン食材だけには留まらない。例えば大豆を水で戻す工程でUmamié処理をすることで、まろやかで香りの強い状態に仕上がることを発見。また、安価なスプマンテにUmamié処理を施せば、気泡がシャンパーニュのようにきめ細かくなり、口当たりが劇的に向上することも実証している。

小川シェフが得意とするのが、味わいを素材に浸透させることと、温度管理のコントロール技術である。ソミュール液に漬けた食材をUmamié処理にかけると、マイクロ波が分子を振動させるからか、通常とはまったく違うスピードで味が芯まで浸透し、熟れた味わいになる。これはその後、多くの料理人が検証してきたことだが、小川シェフがその先鞭をつけたと言える。さらに、微弱なマイクロ波で「鮮度を保ちながら、食材だけをピンポイントで温める」というUmamié処理の特性を活かして、オリーブオイルでマリネした魚介類をコンテナ容器ごとUmamiéでじっくり処理する。そうすることで食材内部の酵素が活性化して風味がこなれ、味わいがよくなっていくのだろう。こんな使い方を自然体で発見してきたのが小川シェフなのである。
干し柿、カラスミ、トマト
小川シェフはUmamiéを、単に肉や魚を寝かせるための「熟成庫」としてではなく、短時間で理想の味を創り出すための「調理器具」と捉えている。そんな小川シェフが今回、彼が強い関心をもって取り組む最新の活用術についてレクチャーしてくれた。その内容は、これまでの手法からさらに一歩踏み込んだ「冷凍してから脱水する」というアプローチだ。「農家が廃棄せざるを得ない素材を、いかに価値あるものに変えるか」というサステナブルな視点を絡めたこのアプローチは、食材のポテンシャルを大きく引き上げる結果をもたらした。

本記事で紹介するのは、ミニトマトのドライトマト化、柿の濃厚干し柿化、そしてカラスミの迅速な仕上げと、冷凍魚(カンパチ)の処理である。

小川シェフが「冷凍で細胞を壊し、Umamiéで迅速に水分を抜く。これが今、僕がたどり着いた理想の調理プロセスなのです」という、その神髄に迫る。
セミドライトマト:
廃棄されるはずの素材を至高のアミューズに変える
セミドライトマト
セミドライトマト
最初に供されたのはドライトマト、といっても、完全に乾燥が進んだものではなく、水分がまだ抜けきっておらずシットリしている、セミドライトマトだ。近年、高糖度のトマトやミニトマトを使って、ドライトマトを自作する料理人も多い。ただ、自作には時間とリスクが伴う。天日干しなら天候に左右されるし、冷蔵庫乾燥であっても10日以上の時間を要するのが普通だ。時間がかかりすぎると腐敗するリスクもあり、コンベクションオーブンを使って半ば強制的に乾燥させているケースも多い。ただ、加熱することで本来的なドライトマトの風味とは違うものができてしまうこともある。

「ドライトマト製造にUmamiéはむっちゃ合ってるんですよ。まずは食べてみてください。」
(小川シェフ)

と、にんまりしながら小川シェフが披露してくれたのが、写真のセミドライトマトだ。
セミドライトマト
Umamiéの設定:
庫内温度 20℃ / 冷蔵温度(外部)1℃ / 風量 強 / 時間 約24時間
左側(※1)は普通の冷蔵庫で乾燥を進めたもの、右側(※2)がUmamiéで乾燥させたものだ。食べてみると、冷蔵庫乾燥はまだまだ水分が抜けきっておらず、グジュっとした中途半端な食感だ。味わいはミニトマト本来の甘さを有しているものの、これまた少しぼやけている。それに対して右側(※2)のUmamié乾燥のセミドライトマトは、しっかり水分が抜けており、ギュッと旨味が凝縮している。酸味が熟れてマイルドになり、甘みが極限まで濃縮されている。もはやトマトというより、良質なトマトソースをさらに煮詰めたような濃厚さだ。筆者としては「これだけで最高のアミューズとして成立してしまうな」と思ってしまった。しかし、本当の驚きはここからだったのだ。
「実はこのミニトマト、冷凍したものなんですよ。農家さんが捨てちゃう規格外品や割れたトマト、めっちゃ多いんすよ。それを毎日、カットして半開きにした状態で凍結して溜めておいてもらう。これをそのまんまUmamiéにかけるんです。一度冷凍することで細胞が壊れるので、解凍されると脱水がグンと進むんです。ふつう、冷蔵庫だと5日以上かかるドライトマトが、たった1日で完成するんですよ。この時短ぶりはUmamiéの真骨頂ですね。農家さんの作った素材を無駄にせず、価値を高められるのは、料理人として本当にやりがいがありますよ。」
(小川シェフ)
なんと小川シェフ、農家が市場に出せず、廃棄してしまうミニトマトを救い出し、かつおいしいセミドライトマトを安全に作る方法を編み出したというわけなのだ。まずトマトをカットして冷凍し、凍ったままの状態でUmamiéにかける。冷凍によってあえて細胞壁を壊すことで、解凍と同時に急速な脱水を可能にし、通常なら数日かかる工程をわずか1日で完結させるのだ。そのために、Umamiéの芯温設定はなんと上限値の20℃! 高めの設定で強制的に水分を飛ばしながらも、ドリップを最小限に抑え、旨味を閉じ込めるというわけだ。そう言われてみると、左右(※1、※2)のトマトの仕上がりを観ると、果肉部の厚みが違う。もちろん、Umamié処理をした右(※2)の方が果肉から水分が脱水され、厚みが薄くなっているのがわかるだろう。
冷蔵庫で乾燥したトマト
(※1)冷蔵庫で乾燥
Umamiéで乾燥したトマト
(※2)Umamiéで乾燥
「Umamiéの風量もこの時は強に設定しています。水分を飛ばすなら迷わず強です。あと、20℃にしているといっても、単に温度を上げればいいってもんじゃないと思っています。今日はわかりやすく20℃でやっていますけど、品質をもっと上げるなら、芯温を10℃くらいに下げて2~3日かけて脱水した方が、中心部までより整った状態に仕上がるんじゃないかなと思います。こうやって一番いい条件を探っていくのが、料理人として最高に面白いところですね。」
(小川シェフ)
意図せず、小川シェフはUmamiéで芯温と風量の調節ができる意義を教えてくれた。芯温と風量の関係性は、料理人の意図(欲しい結果)に応じて調整する余地があるということ。自由度があるので、料理人は素材に合わせ、また自分が欲しいイメージに合わせて使いこなすことができる。そして、おいしさの観点だけではなく、現代のレストランが求められるサステナビリティへの取組としてもUmamiéの存在感が際立つ。旬でたくさん獲れる素材を冷凍保存し、必要な時に迅速に高付加価値化できるこの手法は素晴らしいものではないか。
次に小川シェフが出してきたのは、同じ「干し物」である干し柿だ。
干し柿:
冷凍してのUmamié処理で生まれる味と食感
干し柿
干し柿
Umamiéの設定:
庫内温度 20℃ / 冷蔵温度 1℃ / 風量 強 / 時間 1日~3日
ドライトマトや干し柿といった乾燥食材は、世界中で古くから保存食として親しまれてきた。もうその進化はないかと思われてきたが、現代のレストランシーンでは、乾燥による凝縮を、旨味を凝縮させるための高度な調理技法として再定義する動きもある。ヨーロッパのトップレベルのレストランでは、脱水技術を駆使して野菜や果物の糖度を極限まで高め、肉や魚に匹敵するメインディッシュに昇華させる事例もある。そんな中で提起された小川シェフの乾燥野菜・フルーツは、どんな意味を持つものなのだろうか。小川シェフが提示してくれたのは、先と同じく生産者が捨ててしまうような柿を冷凍したものを原料にした干し柿作りだった。
「セミドライの干し柿です。正直、柿に関してはUmamiéを使うのが一番いいとお薦めできますね。やり方は、皮を剥いてから一度冷凍して、凍った状態のままヨーイドン!で装置に入れる、これだけです。驚くのはドリップが全然出ないことと、その味なんです。冷凍で細胞を壊すことで、果物が持ってる味わいがダイレクトに舌に当たりやすくなって、甘みが一気に濃くなる。そこを狙って脱水まで仕掛けられるのは、まさに理想的な調理法だと思います。」
(小川シェフ)
セミドライの干し柿
上の写真にあるのは、上段右からUmamiéにかけて1日目、2日目、3日目のものだ。それぞれ、果肉がメイラード反応で濃い色になっていくのがわかる。下段の柿はUmamiéにかけず、冷蔵庫に三日間おいたものだ。これをそれぞれいただく。
ただ冷蔵庫で三日間ねかせたものを食べてからUmamié処理を食べ進むと、1日目のもので、すでに甘みが十分に強まっているのを感じる。2日目のものは水分がだいぶ抜けて甘味が凝縮され、そのまま食べるならこれが一番バランスがよいと思える味。
セミドライの干し柿
セミドライの干し柿
しかし3日目になると、見た目にも劇的な収縮をみせて、その味わいも大きく変わっている!
セミドライの干し柿
これは驚くほどの濃厚さだ。果肉の繊維感がしっとりと残りつつも、濃い旨味が押し寄せ、一口のインパクトが凄まじい。水分が抜けている分、他の食材の水分と合わせる余地もある。つまり、Umamié処理2日目のものがそのまま食べるのに向くとするなら、こちらは他の強い食材と一緒に合わせることができるものとして、仕上がっているのだ。
「そうなんですよ、3日目の縮み方、凄くないですか? 味も奈良漬みたいな濃厚な味わいになって、旨みがじわ~っとくるんです。こんなに短期間でここまで脱水できるのは驚きですね。真空をかけなくても、繊維がしっかり残った状態で濃厚に仕上がる。一口食べた瞬間のインパクトが全然違いますよ。今回発見したのが、Umamiéから出した後に外気に触れさせると、一気にバーッと乾燥が進むこと。装置の中で水分が抜けやすい状態になってるのか、出した瞬間の変化のスピードが凄いんすよね。さっきまで少し湿ってたのが、外に出した途端にそれが飛んで軽くなってます。この特性を上手く使えば、仕上げの乾燥を外で行うとか、新しい調理の組み立てができる。これ、使いこなせば料理の幅がめちゃくちゃ広がりますね。」
(小川シェフ)
Umamié処理で「完成形」まで持っていくのではなく、Umamié処理で脱水の勢いをつけたものを外に出して、二次乾燥を早めることもできるというのは、水っぽい食材の脱水を行いたい場合には、知っておくべき特性だ。
お次は、昨今の料理人、とくに日本料理の世界で注目されるカラスミの技術革新である。
高騰するカラスミの民主化!?
安価なサワラコ・タラコをおいしいカラスミに
サワラコ・タラコ
サワラコ・タラコ
近年、和食店では自家製カラスミを作って供することがステータスとなっている。イタリアンやフレンチ、高級な地酒居酒屋などでも、カラスミ作りの模様をインスタなどSNSにアップして、集客につなげていることが多い。ぷっくりしたボラ子を丁寧に血抜きし、塩漬け・塩抜きをして、乾燥させていくという工程のすべてが絵になり、完成品を高く提供できるということが背景にあるだろう。イタリアンであれば、ほぐしたカラスミを絡めたスパゲッティのおいしさは素晴らしいものがある。小川シェフが、Umamiéの前身であるエイジングブースターの頃からカラスミ作りに活用していたのも頷ける。
ただ、ここ最近のカラスミ作りはそのコストの高さゆえ、誰もが手軽に挑戦できるものではなくなりつつある。原料のボラ子は高騰しており、それほど大きくないものでもキロあたり1万円から1.5万円、大から特大サイズだと、キロあたり3万円から5万円以上になることも珍しくない。伝統的な製法では、2週間の乾燥工程中にカビや腐敗を発生させれば、仕入価格はすべて損失となってしまう。
「それを変革するのがUmamiéなんですよ。鮮度を保持したまま速やかに水分を抜いていくというのが、Umamiéの得意技なんですから! 今、自前でカラスミを作るのが当たり前になってますけど、原料のボラ子が今、めちゃくちゃ高いんですよ。そんな高価な素材を2週間もかけて外で干すのは、正直リスクでしかないです。もし失敗したら、原価だけでも大赤字ですからね、、、その点、Umamiéなら2~3日の処理で完璧に仕上がる。何よりも、失敗の不安から解放されるのが料理人として一番のメリットですね。」
(小川シェフ)
そう言って、出してくれたのがこの黄金色に輝くような、美しいカラスミだ。
カラスミ
Umamiéの設定:
庫内温度 20℃ / 風量 強 / 時間 約2~3日
「見てください、この色! 綺麗でしょ? これ、ニュージーランド産のボラ子なんですよ。国産こそナンバーワンという考え方は僕にはなくて、海外産でも旨いものは旨いと思ってます。ボラの卵も国産は高騰していますけど、こういう輸入で買いやすい素材をUmamiéで仕上げれば、最高級のカラスミに引けを取らない。素材の良し悪しを見極めて、最新の技術でその価値をさらに引き上げる。これこそが、今の時代の料理人の役割なんじゃないかなって思いますね」
(小川シェフ)
このカラスミの素晴らしいのは色だけではない。口にして最も驚いたのは、そのクリアな味わいだ。通常の製法で仕上げる時、カラスミに雑味や特有の干物っぽい風味がつくことがある。それがまた味わいになることもあるのだが、、、Umamié処理で作ったカラスミには、そうした雑味につながるものがほぼなく、とても綺麗な味と香りに仕上がっているのだ。カラスミ臭ともいえるものが少ないので、これも料理素材としてさまざまなものに合わせることができると言える。
カラスミ
もうひとつ、小川シェフが提案してくれたのが、北海道産の「たらこ」を使ったカラスミだ。

「これ、全部で1900円程度で仕入れました。これをタラコスパゲッティにするだけじゃなくて、カラスミにしてしまうということが、Umamiéでできるんです。」
(小川シェフ)
カラスミを切る小川シェフ
切ったカラスミ
なんと、タラコのカラスミである。断面をみると脱水が進んでいるのがわかる。口にして、また驚いた。脱水が進んで焼きタラコに近くなっていると思いきや、生の食感のまま脱水されているという不思議な状態だ。もちろん、味わいはギュッと凝縮されている。これはさまざまな料理に使えるのではないか。
「このカラスミを贅沢に使って、最高のタラコスパを作ることができるんです。 完璧にカラスミに仕上がってるので、パスタに絡めた時の香りと旨みが凄いことになりますよ。生の状態の良さと、脱水された濃厚な旨みが共存してる。普通の乾燥カラスミじゃ出せない、Umamié特有の質感を活かした一皿だと思うんです。」
(小川シェフ)
そう言って出してくれたのがこの一皿だ。
スパゲッティ
塩乾品特有の風味に負けない中太麺に、ほぐしたタラコカラスミがまとわりついて、実においしいスパゲッティであった。生とは違い、旨味が凝縮しているので、それほど量を使わなくても、味わいの濃さを楽しむことができる。わずか1,900円程度のコストで仕込まれたタラコがUmamiéの力で高級食材に匹敵する逸品へと変貌を遂げている。伝統をアップデートするとはこういうことか、と痛感させられた。
Umamiéは、風乾の工程をわずか2~3日に短縮し、食材の芯の水分を抜くマイクロ波の技術で失敗のリスクを最小限に抑えることができる。さらに、高価なボラ子だけでなく、サワラやタラコといった安価な素材でも絶品の価値を創出できる。自家製カラスミに安全に取り組みたいのであれば、Umamiéの活用を考えたらよい、ということである。
カンパチ:
失敗さえも知見に変える小川シェフとマイクロ波調理の方程式
カンパチ
カンパチ
この日の最後に小川シェフが出してくれたのは、香川県で養殖されているカンパチだ。香川県は歴史的に養殖が盛んな県で、養殖ハマチ発祥の地でもある。小川シェフの店には多くの養殖業者から「自分の育てた魚を味見して欲しい」と魚が持ち込まれる。そんな中から、最近とどいたというカンパチを処理してくれたのだ。これが、おもわぬ結果となったのである。
カンパチを切る
「これも、これまでと同じ設定で処理したものです。養殖だと、どうしても餌に由来する匂いなどが残ることがあるので、そうしたものを飛ばすことができるのではないか、と思ってUmamié処理をしてみました。」
(小川シェフ)
カンパチ
Umamiéの設定:
庫内温度 20℃ / 処理時間 約12時間
魚の熟成は旨味を引き出す手法だが、温度管理を誤れば腐敗を招く。小川シェフは今回、冷凍カンパチを真空解凍した後、Umamiéで約半日の脱水処理を施す検証を行った。これまでの経験では、冷凍バチマグロが「本マグロと見紛う味」にまで向上した例もあったが、今回のカンパチでは思わぬ結果が待ち受けていた。というのも、試食した筆者が感じたのは、オフフレーバー(嫌な臭み)の凝縮されたものだったのだ。水分が抜けて旨味が濃くなる一方で、魚が持っていたネガティブな要素までが強調されてしまったのかもしれない。
カンパチ
小川シェフも「あれ、終わった後に口の中に変な味が残っちゃう。これは料理人として一番嫌なことですね。」と苦笑いを見せた。しかし、この失敗こそが次なる知見を生む、と小川シェフの目は輝いていた。
小川シェフ
「Umamiéの、安い魚を美味しく引き上げる力は本当に素晴らしいものがあります。伊藤シェフがやったように、冷凍のバチマグロをUmamiéにかけると、目隠しして食べたら本マグロかと思うくらいの味になりますよね。でも、今回のカンパチでわかったのは、水分が凝縮されるってことは、魚が持ってる嫌な臭みまで一緒に凝縮されちゃうってことですね。おそらく温度設定でしくじりました。今回はいろんな食材を20℃で短時間に仕上げようとしたのですが、その温度が微生物を活性化させて嫌な味を生んじゃったのかもしれません。次は9℃くらいに下げて、ゆっくり時間をかけて脱水してみます。素材の状態と温度、時間のバランス。この方程式を解くのが面白い。探求を継続します!」
(小川シェフ)
小川シェフのUmamié使いこなしの挑戦はまだまだ続く。それは、ひたひたと飲食業界に迫っている、食材価格の高騰や資源の枯渇といった問題への、真剣な取り組みでもある。
「今、魚はどんどん高級品になってて、へんな肉より高いこともあります。だからこそ、安い素材をどう価値あるものに変えるかが僕ら料理人の腕の見せ所なんです。カンパチは課題が残ったけど、これが解決できれば、通常なら廃棄されるような魚を最高の一皿に変えることもできるかもしれません。Umamiéを使って、水産業を根本から変えるような取り組みを香川から発信したいですね。」
(小川シェフ)
イタリアンレストラン「ノッキングキッチン」
今回の小川翼氏のレクチャーを通じて見えてきたのは、Umamiéがもたらすのは単なる「熟成」「脱水」だけではなく、食の未来の可能性までも含有しているということだ。単に食材を美味しくするだけでなく、廃棄されそうな素材に新たな価値を与え、高価な食材を扱うリスクを軽減し、料理人の創造性を拡張し、加速させる力を持っている。
「これからは、Umamiéを使ってただ熟成するのを待つのではなく、技術で調理プロセスをコントロールする時代になると思います。」と小川シェフは確信を持って語る。香川の地から発信されるこの革新的なアプローチは、やがて世界の料理界における新たなスタンダードとなるだろう。
店舗情報
Knocking kitchen
〒760-0071 香川県高松市藤塚町3-5-19 ミカサビル 1F
TEL:087-837-8181
四国計測工業株式会社